Reikaの徒然草(改)

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悲しくて哀しい、フランツ・ヨーゼフの100万倍我慢した人、大野次郎衛門様 -壬生義士伝 感想

暑いですねー。そして雪組のチケットが取れない。あぁ、「Music Revolution」が観たい…。
 
というわけで観て参りました、「壬生義士伝/Music Revolution!」。
いやー泣きました。私、美弥ちゃんの退団で今年の涙は全部出し切ったと思ったんですよ(りくの時あまり泣かなかったからww)
なんだよー、普通に泣くじゃんか、私ー(笑)
 
芝居の内容で泣いたのって久しぶりかもしれない(って思ったけど、私ファントムでバンバン泣いてるんだわww)
でもけっこー泣いた。物語と役者の芝居でこんなに泣いたのはグラホぶりかな。
りかちゃんがトップだったころは観に行けば泣いていたんだけれども(笑)
 
この作品には悪人は出てきません。御陵衛士とか主人公と敵対する存在は出てくるけど、いわゆるモンクリのフェルナンみたいなTHE☆クズ(笑)な「絶対悪」は出てこないです。谷三十郎さんとかたぶん上司にいたら無能振りとかイラッとすると思うんだけどwwお金を横領してその罪を小川さん(あすちゃん)に被せたかもしれない、という話は出ているけど、実際にはわからないし、まぁ企業とかでも似たようなことはなくはないだろうからね…😣 原作では金の横領話はなく、小川さん本人が悪くて切腹だしね(そうです、原作読みました笑)。
なにより 彼ら兄弟が無能であり、その無能な彼らが新選組で上位に取り立てられてしまったことがほかの隊士たちにとっては罪であったけど、別に誰かを陥れたりなんだりであの地位を手に入れたのではなくて、近藤さん本人のコンプレックスから谷兄弟は持ち上げられてしまったからね。
 
しいて言えばこの物語で悪いのは「時代」と「武士道」でしょうか。でも、この物語に関しては「絶対悪」がないことこそ「哀しさ」の要因だと思います。
貫一郎さんも妻子を放っぽり出して脱藩はどうか、とも思わないではないけれど、あれほど食い詰めて実母が自死として餓死を選んだり、妊娠中の妻が身投げを試みたりする様を見たらもう如何ともしがたいでしょう。誰を責めたらいいのか、時代を、身分を、飢饉を恨めばいいのか、でも貫一郎さんは誰をも恨まず、武士ならきっと下げたくもなかろう頭も下げまくり、人々から謗られ侮られても金をせびりまくり、贅沢もせず家族のために金を送り続けて…。こう書いているとこの物語って、時代が江戸時代だから行動一つ一つが命がけだけど、要は現代のサラリーマンと中間管理職の悲哀の物語だよね(笑)
 
そうして頭を下げ続けて、人々に馬鹿にされ続けて、それでもへらへら笑い続けた彼が爆発したのが結局鳥羽・伏見の戦いなんだよね。「義」のために戦う、と言って、確かにそのとおりなのかもしれないけど、それ以上に父として「男とは何たるものか」「武士と何たるものか」を最後の最後に見せたくて爆発したんじゃないかと思う。(原作が「武士道」の完全否定なので、「武士とは何たるものか」はちょっと違うかもしれないけれど)
そのタイミングまで爆発できなかったこと、爆発したがために死にざるを得なかったこと、そして最後の最後に南部藩に帰りたくとも帰れなかったことがなんとも哀しくて仕方がない。そして、頼ってきた竹馬の友を足蹴にせざるを得なかった次郎衛門様が悲しくて哀しくて仕方がない(やっと本題にたどり着いた・・・笑)
 
我慢我慢で生き続けた貫一郎さんももちろん哀れなんだけれど、次郎衛門様の哀しさったらない。
次郎衛門様の耐えなければならなかったことって
正室の義母や実父の冷たさに耐えなければならなかった(これは宝塚のほうは書いてないけど原作小説ではどれだけ次郎衛門様が我慢に我慢を重ねて、それでも優等生として生きねばならなかったか、が書いてある)。
庶子だから、と言う周りの評価を覆すために、通常の何倍も努力しなければならなければならなかった。
③身分が低すぎるが故に実母を粗末なところに住まわせなければならなかった
(幽閉に近いくらいの窮屈な生活を強いざるを得なかった)
④仲良く過ごしてきた竹馬の友、貫一郎さんと身分の垣根ある付き合い方をしなければならなくなった
⑤惚れていた南部小町のしづさんを友達にとられる(まあ、これは本人が友情のほうを取ったし、実母にも南部小町まで欲張ったらいけないと言われているから、耐えることのうちには入らないかもだけれど)
⑥脱藩するほどに困窮する親友を表立っては救えなかった
⑦幕末の難しい時期に藩を背負う立場になった(原作だと次郎衛門無しには藩が立ち行かなくなるくらい仕事を抱え込んだ)
⑧⑦で難しい立場になったが故に、屋敷に転がり込んできたかつての友に表立って優しい言葉をかけてやることもできず、ひどい罵倒の言葉しか言ってやることができず、あげく切腹を言い渡すしかなかった(これゆえ、原作では「鬼」扱いされている)
⑨その後の友を気遣った振る舞いも、表立ってはできなかった
⑩友の死を表立って嘆くこともできず、偽って伝えざるを得なかった
⑪(原作では)秋田藩を攻めることを藩主に進言し、南部藩が賊軍扱いとなり、藩の人々の恨みを買った
とまあ、これだけあって、それを文句も言わずに耐え抜いて、最後は討ち死に(原作は処刑)してしまったんだからこれほど報われない、哀しいお方もいないと思う。
私、宝塚で「忍耐」の人って「エリザベート」のフランツ・ヨーゼフだと思っているんだけれども、大野次郎衛門様はそれの10倍100倍「忍」んで「耐」えた方だと思う。そしてこの「忍」の一文字のような人を演じきった咲奈がすごいわ。あとは、もう本当に自分主演で、名作と言うか、当たり役がくることだけだな、問題は。
 
長くなりすぎたので役者感想は次に。
 
追記:筆が遅すぎて、とっくの昔に千秋楽が終わったタイミングでの投稿ですwww。
一応自分用の記録として、書いた当日の日にちで投稿…。